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あめ

雨

織田 作之助

「海風」1938(昭和13)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,261 字 · 44 页

青空文庫

しかし、失敗ほどこの少年を奮いたたせるものはないのだ。翌日は非常な意気ごみで紀代子の帰りを待ち受けた。前日の軽はずみをいささか後悔していた紀代子は、もう今日は相手にすまいと思ったが、しかし今日こそ存分にきめつけてやろうという期待に負けて、並んで歩いた。そして、結局は昨日に比べてはるかに傲慢な豹一に呆れてしまった。彼女の傲慢さの上を行くほどだったが、しかし彼女は余裕綽々たるものがあった。豹一の眼が絶えず敏感に動いていることや、理由もなくぱッと赧くなることから押して、いくら傲慢を装っても、もともと内気な少年なんだと見抜いていたのだ。文学趣味のある彼女は豹一の真赤に染められた頬を見て、この少年は私の反撥心を憎悪に進む一歩手前で喰い止めるために、しばしば可愛い花火を打ち上げると思った。なお、この少年は私を愛していると己惚れた。それをこの少年から告白させるのはおもしろいと思ったので、彼女はその翌日、例のごとく並んで歩いた時、

「あんた私が好きやろ」

しかし、

「嫌いやったら、いっしょに歩けしまへん」

と、期待せぬ巧妙な返事にしてやられた。

「けったいな言い方やねんなあ。