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あめ
雨
織田 作之助
「海風 第四巻二号」1938(昭和13)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,421 字 · 60 页
の顔をちらと思い浮べた。しかし私はちがう。彼女は、来年十九才で学校を出ると直ぐに今東京帝国大学の法学部に通っている従兄と結婚することになって居り、十六の少年など十も年下に見える姉さん振りが虚栄の一つであった。だから、その翌日から三日も続けて、上本町六丁目から小橋西之町への舗道を豹一に尾行られると半分は五月蝿いという気持からいきなり振り向いて、何か用ですのときめつけてやる気になった。三日間尾行するより外に何一つ出来なかった弱気の為に自らを嘲っていた豹一の自尊心は、彼女からそんな態度に出られたために、奇蹟的に本来の面目をとりかえした。こゝでおど/\している様では俺もおしまいだと思うと眼の前がカッと血色に燃えて、用って何もありません、唯歩いているだけです。その呶鳴る様な調子が紀代子の胸にぐっと来て、うろ/\しないで早く帰りなさい。その調子をはねとばす様に豹一は勝手なお世話です。子供の癖に、といったが巧い言葉が出ず紀代子は、教護聯盟の人にいいますよとその頃校外に於ける中等学生を取締まる怖い人を持ち出した。いいなさい。強情ね、一体何の用? 用なんてないと言ってまんがな、分らん人やな。