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ゆきのいちにち
雪の一日
岡本 綺堂
「新潮」1933(昭和8)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,354 字 · 5 页
またその大都会に住む人々のうちにも、いわゆるプレイ・ゴーアーなるものは案外に少数であることを記憶しなければならない。
先月初旬に某雑誌から探偵小説の寄稿をたのまれたが、私はなんだか気が進まないので、実はきょうまでそのままにしておいたのである。それを急に書く気になって、わたしは机の上に原稿紙をならべた。耳がまだ少しく痛む。身体にもすこしく熱があるようであるが、私は委細かまわずにペンを走らせて、夕方までに七、八枚を一気に書いた。
あたまの上の電灯が明るくなる頃になっても、表の雪はまだ降りつづけている。私もまだ書きつづけている。信州にも雪が降っているであろうか。T氏の村の人たちは炉を囲んで、今夜は何を読んでいるであろうか。(大正十五年三月)