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ゆきのうえのおじいさん

雪の上のおじいさん

小川 未明

「童話」1922(大正11)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,520 字 · 14 页

青空文庫

「お家へ帰りたい。」と、ただ、こういって泣いているばかりでありました。

おじいさんは、ほんとうに困ってしまいました。それにしても、さっきから、この子供はこの公園のあたりで泣いているのに、だれも、いままで、しんせつにたずねて、家へつれていってやろうというものもない。なんという町の人たちは、薄情なものばかりだろう。それほど、なにか忙しい仕事があるのかと、おじいさんは不思議に感じたのでした。

「お家へ帰りたい。」

子供は、こういって泣きつづけていました。

「ああ、もう泣かんでいい。私が、坊やをつれていってやる。」と、おじいさんは、子供の手を引いて、そこの鉄さくから離れました。

「坊や、困ったな。お家のある町がわからなくては。」と、おじいさんは子供をいたわりながら、小さな手を引いて歩いてきました。すると、あちらに、風船球売りがいて、糸の先に、赤いのや、紫のをつけて、いくつも空に飛ばしていました。

「どれ、坊やに、風船球をひとつ買ってやろう。」と、おじいさんはいいました。

子供は、見ると、ほしくて、ほしくてたまらない、紫のや、赤いのが、風に吹かれて浮かんでいましたので、泣くのをやめて、ぼんやりと風船球に見とれていました。