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ゆきこさんのどろぼうよけ
雪子さんの泥棒よけ
夢野 久作
「月刊探偵 2巻5号」1936(昭和11)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 857 字 · 2 页
夜中に雨戸のところでゴリゴリと音が始まりました。家中で雪子さんがたった一人眼をさまして、何だろうと思いました。鼠ではなく、どうしても人間が何かしているとしか思われませんでした。雪子さんは急いでお父さんとお母さんをゆすり起しましたが、なかなかお起きになりません。そのうちにゴリゴリと物を削る音が一そう高くなったようです。雪子さんはどうしようかと思いました。
音のするところへ行って見ると、雨戸の掛金のところを外から泥棒が切り破っているのです。雪子さんがそこらを見まわしますと、玩具のバケツがありましたから、そっとそこへ押し当てました。
そのうちに泥棒が雨戸を切り破って来ると、何か固いものがあります。小刀で突いて見るとカンカン音がします。雪子さんはおかしくなりました。
泥棒がどこかへ行ったと思ったら、今度は台所の方へ音が廻りました。雪子さんは又、そこへジッと押し当てて待っていました。泥棒は又カンカンと言う物に行き当りました。
「馬鹿に用心のいい家だナ。まさか家中、金で張ったるんじゃあんめえ」
と言いながら、今度はお座敷の床の間の壁のまん中をゴリゴリ始めました。