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ゆきざっき

雪雑記

中谷 宇吉郎

「中央公論」1937(昭和12)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,988 字 · 20 页

青空文庫

その中に計千枚位の写真と、積んだら一尺五寸位になるレポートを作って皆卒業して行ってくれたのでやれやれと思ったら、また新しい三年生の研究実験を始めねばならないという始末である。この調子で生涯働かされるのだったら、研究というものも因果な商売である。その最も因果な所以が自分から面白くなって止められない点にあるのだから全く厄介なことである。雪の全種類の結晶が、気温と水蒸気の量とを変えることに依って出来るといったのは実は少し胡魔化しがあるので、自然の工はなかなかそう簡単ではないようである。事実今までの千枚の人工雪の写真を見ると、雪の結晶の殆んど全種類がその中にあるので、前の結論は嘘ではない。しかしそれではまだ学問にはなっていないのである。それというのは、逆に或る一定の結晶を指して、これを今作って見ろといわれると少し困るのである。五回もやれば三回か四回は出来るのであるが、どうかしてこじれるとなかなか思う形の結晶が出来ないことがある。それではちょっと困るのであって、要するにまだ結晶をきめる条件の中で隠された条件が沢山あることになる。気温とか水蒸気の量とかいう風に数値で簡単にあらわされる条件は見やすいので滅多に見落すことはないのであるが、その外に簡単に一つの数値で現わされない条件が大切な役割をすることがある。