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くもとこもりうた

雲と子守歌

小川 未明

「新児童文化 第1冊」1946(昭和21)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,823 字 · 10 页

青空文庫

夜はしだいに更けていくのです。そのとき、暗い、寒い、廊下に立って、子守歌に耳を傾けている、おばあさんがありました。

「私も、せがれを大きくするまでには、いくど泣いたり、笑ったりしたかしれない。そして、戦争で、出征してからも、便りがなかったのは、一年や二年でなかった。実に長い間のことで、あの子の安否を気遣い、そのため、私は、やせてしまった。しかし死んだとは思われず、どこかに生きているものと、毎日かげぜんを供えて、ただ、あの子が、どうかして無事に帰ってくれるのを待っていた。そのかいもなく、戦死の報知があったときには、私は、まったく気が転倒してしまった。しかし、いまだに、死んだと信ずることができず、どこか南の名もない島にでも生きているような気がして、きょうまではかない希望をつないでいるのではあるが、もしせがれが、草葉のかげに眠るとしたら、一人の母が、こうして、派出婦となって、たよりなく、日を送るのを、どうして知るであろうか。」

哀れな老婆は、しわの寄るほおを流れる、涙を手でふいていました。

重い荷でも積んだトラックが、どこか外の往来のぬかるみに、はまり込んだとみえ、先刻から、けたたましく笛を鳴らして、抜け出ようとあせっている。