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くものわくころ

雲のわくころ

小川 未明

「小学六年生 5巻6号」1952(昭和27)年9月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,198 字 · 11 页

青空文庫

」

おじさんのこの話は、勇吉の胸に重くのこって、もうほかのことには気がむかず、ついに、かれをだまらせてしまいました。

朝出かける時分には、人間の発明力や科学の力に、おどろきを感じたのであったが、帰るときには、どれだけ愛し真心をかたむけつくしても、永遠に引きとどめられないものがある人生のはかなさを、知ったのでした。

二人が、自分たちの町についたころ、もう日はくれかけていました。西の方の空は、うす赤く色づいて、その下には、紫色の山々が、高く低く、くっきりと、姿を浮かび出していました。

このごろは、日没前になると、きまって大空に、雲がわくのでした。ときどき、雷が鳴って、雨がふりそうに見えながら、夜は、また、一片の雲すらなく、晴れ晴れと晴れ上がるような、日でりがつづきました。

そんなときは、足ばやに、秋のくるけはいが感じられたのです。勇吉は、毎日、庭のやまゆりの花へきて、その茎にとまる、とんぼのあるのを知っていました。

この未知の友だちどうしは、たがいに気が合って、人間などにかかわりのない、美しいまぼろしの世界のことを、話しているのだとも思われました。

ところが、一日、花は、いとなみおえて、ちってしまいました。