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でんきぶろのかいしじけん
電気風呂の怪死事件
海野 十三
「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页
恐らく此の女は、男湯の騒ぎの最中に殺されたものであろう。そう想う人々の面に、何がなし深い恐怖と不安が漂い初めたのを、赤羽主任も一通り看取する余裕を持っていた。
だが、見渡したところ、浴室の窓が開いている訳でもなし、吹矢を打ち込む隙間があろうとも思われなかった。と、赤羽主任の頭にさっと閃いたのは、由蔵が姿を見せないということである。
「君、ちょっと、釜場の上にある由蔵の部屋を捜索して呉れ給え。狭い梯子で昇れるようになっている所だ」
部下の一人に耳打ちした赤羽主任は、次にも一人の部下に、容疑者として由蔵の逮捕方並に非常線を張ることを、本署に電話するように命じた。
直に、その二人はそれぞれの役目に就くべく其の場を去ると、赤羽主任は、向井湯の主人と女房を眼で呼び寄せた。
主人は、赭ら顔を全く恐怖で包んだまんま扉口の前列に立っていた。女房はというと、投げ出した蒲団の後に眼を据えたまま口を開けて立ちつくしている。四囲の人々がどうあろうと、そんな判別もつかぬらしく、ただ徒らにその眼は執念く女の屍体に注がれていた。
「君たち夫婦の中で、この女の顔に見覚えのある者はいないかね?」