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でんきぶろのかいしじけん

電気風呂の怪死事件

海野 十三

「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页

青空文庫

赤羽主任の訊問に、はじめて我に返った両人は、再び指し示されたその女の屍体に眼をやったが、答は横に振った首でなされた。

次々と、その場に居合せた程の人々は、順に訊ねられたが、口数少く、いずれも女の身元に就ては未知との答ばかりであった。

と、何を思ったか、低い、ややもすると隣の人にさえも聴き取れないような口籠り方で、女房が呟いた。

「……しかし、変だこと!」

「何? 何処が変だね?」

赤羽主任の声に、一同は女房と共にはっと眼を上げた。そして、赤羽主任の眼が女房の言動に何事か関心を持ったらしいことに気がついて、一層緊張した沈黙が生れた。

女房は、飛んでもないことを云ってしまった、という様な不安を以て、まじまじと赤羽主任の眼を視返した。

「今、変だこと! って云ったじゃないか?」

「ええ、でもそれは――」

しかし、女房は云い逃れることの無駄を知って、おずおずと口を開いた。

「いえね、先刻男湯で沈んだお客の体が見つかったとき、それがわたしの鼻の先なんでしょ。わたし、びっくりしちゃって奥へ逃げ出そうとしたんです。すると、ちょうどその時、女の人が一人、裸のまんま、わたしと衝突ったんです。