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でんきぶろのかいしじけん
電気風呂の怪死事件
海野 十三
「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页
と。――
だから、今日も、彼は例日のように、いや、むしろ今日は進んでこの電気風呂へやって来たのだった。というのは、前夜、銀座あたりを晩くまでのそのそとほっつき歩いた疲労から、睡眠も思ったより貪り過ぎたためか、妙に今朝の寝醒めはどんよりとしていたので、匆々タオルと石鹸を持って飛び込んで来たのだった。
めっきり、暖い午前なので、浴室には何時ものように水蒸気も立ち罩めてはいなかった。
よっちゃんと呼ばれる風呂屋の由蔵が、誰かの背中を流しながらちょっと挨拶した。陽吉は黙って石鹸と流し札を桶の上に置いて湯槽の横手へ廻った。浴客は皆で四人、学生らしいのが湯槽に漬っているだけで、あとはそれぞれ流し場でごしごしと石鹸を使っていた。由蔵が流してやっている老人が、いかにも心地好さそうに眼を細くしてされるがままに肩を上下に振っている。全くのんびりとした昼湯の気分が漲っていた。
陽吉は、そうした気分を未だ充分に感じられずに、ひょいと手拭を湯槽に浸した。と、ピリピリといやに強い感覚、頸動脈へドキンと大きい衝動が伝った。何となく心臓の動悸も不整だな、と思いながらも、肌にひろがる午前の冷気に追われて、ザブンと一思いに身を沈めた。