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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

「一向に話がはかどらないそうですよ。先に立ってやろうという人がないらしいんですの。」

A女は静かに答えました。

「おおかた、そんなことだろうと、わたくしも思っておりました。」

村尾さんには、A女自身までが冷淡なように見えました。

するうちに、事情が一変しました。相良家の主人が旅から帰って来て、右の話を聞きますと、稲荷さんを祭るのもよかろうと言いました。そんなことに何もこだわる必要はないし、屋敷内に祭ってあったものなら、新たに祭り直しても構わないし、ついては、どういう人か知らないが、村尾さんのお友だちとかいうその人にも立ち会って貰いたいが、その代り、樹の切株のことや、地蔵さんのことには、うちでは一切関係しない、とそう言うのでした。

分譲地の人たちの方でも、反対者を除いて、地所の祓い浄めをしてみようということになりました。だんだん調べてみると、切株の樹が茂っていた昔、その枝で縊死を遂げた女人があった由でした。

そして、相良家の稲荷さんは、新たに祭り直されました。A女は無理に頼まれ、名前は匿して、古い御堂の開扉の役をしましたが、中を調べてみますと、それは珍らしく、女夫稲荷だったのです。