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れいかん
霊感
豊島 与志雄
「中央公論」1952(昭和27)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页
この科学の世の中にばかなことを言うものではない、という反対なのが一つ。一向まとまりはつきませんでした。
ただ、江口さんとほかに二家族だけが、身禄さんに時々お詣りをしました。碑のまわりを掃除したり、草をむしったりしました。A女もまた、江口さんに案内されて、お詣りをし、読経を捧げました。
そして、二ヶ月ばかりたったある夜、不思議なことが起りました。
深夜、A女はふと眼を覚しました。へんに息苦しく、異様な気持ちでした。瞳を宙に凝らしていますと、音なき声が聞えました。
――水行。
しかし、その声を聞いたあとで、A女は我に返って、これは厄介なことになったな、と思いました。夏のことではありましたが、夜中に起き上って水を浴びるのは、難儀なことに違いありません。それでも、水行というその無音の声には、どうしても逆らえませんでした。
彼女は起き上って、風呂場にはいり、浴槽に水道の水を注ぎ、そして素裸となりました。
さて水行といっても、バケツで浴びるか、手桶で浴びるか、または洗面器で浴びるかは、その場に至って自然に決定されることです。幾杯浴びるかも、自然に決定されることです。