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しもばしら

霜柱

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1960(昭和35)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,328 字 · 29 页

青空文庫

のも腫れ物に触るようなあんべえ式だ、そんなこって子供が満足に育つかってんだ」

男は指で佃煮を摘み、口へ放り込んで噛みながら、徳利へ口を当てて飲んだ。

「ごらんの如く」と男は片手で胸を押えた、「おらあこんな人間になった、牢屋のめしこそ食わねえが、ぬすっと同様なこともし、女を売りとばしたことも五たびや六たびじゃあねえ、大阪では賭場のでいりで、人を二人あやめたことさえあるんだ」そして急に声をひそめ、喜兵衛の顔を覗きながら云った、「おめえ、人をあやめるってことを、知ってるか」

「自慢されたのは初めてだ」と喜兵衛が云った、「もう要件を持ち出してもいいだろう」

「金五十両」と男が云った、「あさっての朝までに都合してもらおう」

「どういう理由だ」

「この屋敷と和泉の娘の代銀だ」と男は云った、「おれはこの城下へ半月めえに帰ったが、ここでもまたまちげえをやらかしてふけなきゃあならねえ、町にもいどころがねえから、鶴来の社に隠れてるような始末だ、あさっての朝までに金五十両、それでおめえも厄介ばらいができる、安いもんだぜ」

「草鞋代として小粒一枚、それ以上は鐚一文もいやだ」

「小粒一枚、と、一分か」