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あおいめがね

青い眼鏡

野村 胡堂

「富士」1929(昭和4)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,201 字 · 24 页

青空文庫

「多分その婦人が教えてくれたのだろう」

指す金庫室の中には一人の美女、鉄の扉に縛られ、白昼の如き光りの中に、数十百の眼に見詰めらるる恥しさも知らず、あまりの不意の救い手に、驚きと喜びに気を喪ったのでしょう、咲き崩れた大輪の白牡丹のように倒れて居ります。

「本当か」

「本当とも、尤もそれは暗示だけだ、あとは、あの劇場のちらしの裏を、赤い光線で読んで万事を知ったのだ」

「そこまで気が付いたか」

「馬鹿にしてはいけない」

「それではもう言うことはない」

「もう切り札はないか――、大谷千尋、それでは言うが、お前は少し増長し過ぎたよ、悪漢には悪漢の義理があり、泥棒には泥棒の道があるものだが、お前はあまりに無慈悲で、あまりに冷酷だった。花房一郎を馬鹿にするのはいいが、天を嘲り、人間の道を蹂躪して何時まで永い娑婆があると思う? お前は自分の身が危うくなると、暗号を刷らせた仲間の印刷屋まで殺してしまったろう、それで証跡を隠せると思うのは大間違いだ。見ろ、殺された印刷屋が、お前の命令で刷ったこの劇場のちらしの裏の仕掛が、お前を最後の運命に導く罠になったじゃないか」

花房一郎の言葉は痛烈を極めました。