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あおべかにっき

青べか日記

山本 周五郎

――吾が生活 し・さ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,334 字 · 76 页

青空文庫

でなければ教員にでもなるのだ。さあ来い。三十六は却々挫けはしないぞ、見ろ。明日の日に栄えあれ。(二五八八、一〇、一三)

朝のうち海の方へ行った。葦の洲の中では、鴨が飛び廻っていた。鶺鴒が鳴いていた。林檎の朝食を採ったあとで、汽船で行徳へ行った。スケッチをした。行徳の町はこれですっかり見た訳。江戸川放水路の堤で休み、行徳橋を渡って八幡の方へ行ったが、中途で止めた。徳願寺と云うのを見た。「文化四年八月十九日 深川富岡八幡祭礼の日 永代橋が墜ちて溺死した者の碑が建っていた」古風な鐘楼があり、雅味ある松があった。山門の仁王は駄作、見るに足らぬ。今夜も高梨の家で夕食をよばれた。あいなめ、と云う小魚と栗と新しい野菜の漬物で茶漬をうまく喰べた。食後河岸の田川堂で紅茶を三杯飲んだ、野蛮なことである。ああ行徳の船着場にある燈籠は文化九年建造のものである。さて寝よう、明日から当分また東京だ、もう間もなく浦安ともお別れである。

夕景に水番所の方を散歩した。物音一つしない広い川原、半ば枯れた雑草を戦がせて吹く風、淋しい葦の花、静かな日の光を見ていると、人生はまことに侘しく生甲斐なく思われる。