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『しゅっけとそのでし』のついおく

青春をいかに生きるか

倉田 百三

倉田百三『青春をいかに生きるか』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『出家とその弟子』の追憶、愛の問題(夫婦愛)、学生と教養、学生と生活、学生と先哲、学生と読書、女性の諸問題、人生における離合について、婦人と職業、芸術上の心得。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 94,413 字 · 190 页

青空文庫

になりたいということであった。「最も善い人間が最も幸福でなければならぬ」と自分は思った。自分はまだそのときカントの第二批判を知らなかったが、自分のたましいの欲するところはとりもなおさずカントの至完善の要請であったのである。人間の倫理的養成がいかにわれらの禀性に本具しているかはこれでも思いあたるのである。その青春時代学芸と教養とに発足する時期において、倫理的要求が旺盛であるか否かということはその人の一生の人格の質と品等とを決定する重大な契機である。倫理的なるものに反抗し、否定するアンチモラールはまだいい。それはなお倫理的関心の領域にいるからだ。最も許しがたいのは倫理的なものに関心を持たぬアモラールである。それは人間としての素質の低卑の徴候であって、青年として最も忌むべき不健康性である。健康なる青年にあってはその性慾の目ざめと同時に、その倫理的感覚が呼びさまされ、恋愛と正義とがひとつに融かされて要請されるものである。

さてかような倫理的要請は必ず倫理学という学に向かうとは限らない。一般に科学というものを知らなかった上古の人間も学としての形態の充分ととのっていない支那や日本の諸子百家の教えも、また文字なき田夫野人の世渡りの法にも倫理的関心と探究と実践とはある。