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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
そのうちに女の人とも会わなくなって、やがて僕は淪落の新らたな世間に瞬きしていたのであった。僕はもう全然生れ変っていた。僕はとてもスタンダールのようにヌケヌケしたことが言えないので、正直なところ、この女の人はもう僕の心に住んでいない。ところが、会わなくなってから三年目ぐらいに(その間には僕は別の女の人と生活していたこともあった)女の人が突然僕を訪ねてきて、どうしてあの頃好きだと一言言ってくれなかったと詰問した。女の人も内心は最も取乱していたのであろうが、外見は至極冷静で落着いて見えた。僕はすっかり取乱してしまったのである。忘れていた激情がどこからか溢れてきて、僕はこの女の人と結婚する気持になった。それから一ヶ月ぐらいというもの、二人は三日目ぐらいずつに会っていたが、淪落の世界に落ちた僕はもう昔の僕ではなく、突然取乱して激情に溺れたりしても、ほんとはこの人がそんな激しい対象として僕の心に君臨することはもう出来なくなっていたのである。
女の人がこれに気付いて先に諦らめてしまったのは非常に賢明であったと僕は思う。女の人が、もう二度と会わない、会うと苦しいばかりだから、ということを手紙に書いてよこしたとき、僕も全く同感した。