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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
丁度藩邸が普請中で、建物は出来たがまだ庭が出来ていなかった。ところが殿様が登城して外の殿様と話のうちに、庭ぐらい一晩で出来る、とウッカリ口をすべらして威張ってしまった。苦労を知らない殿様同志だから、人の揚足をとったとなるともう放さぬ。それでは今晩一晩で庭を作って見せて下さい。ああ宜しいとも。キッとですね。ということになって、殿様は蒼白になって藩邸へ帰ってきた。すぐさま都甲太兵衛を召寄せて、今晩一晩でぜひとも庭を造ってくれ。宜しゅうございます。太兵衛はハッキリとうけあったものである。一晩数千の人夫が出入した。そして翌朝になると、一夜にして鬱蒼たる森が出来上っていたのであった。尤も、この森は三日ぐらいしか持たない森で、どの木にも根がついていなかったのだ。宮本武蔵の高弟はこういう才能をもっていた。都甲家は今も熊本につづいているという話である。
宮本武蔵に『十智』という書があって、その中に「変」ということを説いているそうだ。つまり、智慧のある者は一から二へ変化する。ところが智慧のないものは、一は常に一だと思い込んでいるから、智者が一から二へ変化すると嘘だと言い、約束が違ったと言って怒る。