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せいしゅんろん
青春論
「文学界 第九巻第十一号、第十二号」1942(昭和17)年11月1日、12月1日発行
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,657 字 · 69 页
が物語をきいたときの驚きの深さは僕の頭を離れぬことのひとつである。宇野さんもかなりの年齢になられているから、鬼女の懊悩が実感として激しかったという意味もあろうけれども、失われた青春にこんなにハッキリした或いはこんなに必死な愛情を持ち得るということで、僕は却って女の人が羨しいような気がしたのだ。この羨しさは、毛頭僕の思いあがった気持からではないのである。
女の人には秘密が多い。男が何の秘密も意識せずに過している同じ生活の中に、女の人は色々の微妙な秘密を見つけだして生活しているものである。特に宇野さんの小説は、私小説はもとより、男の子の話だの、女流選手の話だの老音楽夫人の話だの、語られていることの大部分はこういう微妙な綾の上の話なのである。これらの秘密くさい微妙なそして小さな心のひとつひとつが正確に掘りだされてきた宝石のような美しさで僕は愛読しているのだが、さればとて、然らば俺もこういうものを書いてやろうか、という性質のものではない。僕の頭を逆さにふっても、こういうものは出てこない。なるほど宇野流に語られてみれば、こういう心も僕のうちに在ることが否定できぬが、僕の生活がそういうものを軌道にしてはいないのである。