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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

★

私の徴用された会社では、私が全然スローモーションで国民学校五年生ぐらいの作業能力しかないので驚いた様子であった。私はすぐ事務の方へ廻されたが、ここでも問題にならなかった。

けれども別に怠けているわけでもなく、さりとて特別につとめるなどということは好きな男の人にもしてあげたことのない性分なのだから、私はヒケメにも思わなかったし、人々も概して寛大であった。

会社は本社の事務と工場の一部を残して分散疎開することになり、私の部長は工場長の一人となって疎開に当り、私にうるさく疎開をすすめた。

私が何より嫌いなのは病気になることと、そして、それ以上に、死ぬことであった。戦争が本土ではじまることになったら山奥へ逃げこんでも助かるつもりでいたが、まだ空襲の始まらぬ時だったので、遊び場のない田舎へ落ちのびる気持にもならなかった。

私は平社員、課長、部長、重役、立身出世の順序通りに順を追うて口説かれたが、私は重役にだけ好感がもてた。若い男達が口説くというよりただもうむやみにからだを求めるのを嫌うわけではなく、私自身は肉慾的な要求などはあんまりないのだけれども、私は男女が愛し合うのは当然だと思っており、その世界を全面的に認めているから、たとえば三木昇が好色で肉情以外に何もなくとも、そのことで軽蔑はしなかっ