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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

なんて破天荒の異常事だということなどは気がつかないのだ。ガッチリ屋のくせに無智そのものの世間知らずであった。

あいにくなことに御年配の華族や大金満家には御近づきの光栄を得ず、三木昇という映画俳優と友達になった。美貌を鼻にかけるだけが能で、美貌が身上だと思っており、芸術についての心構えが根底に失われている。ギターが自慢で、不遇なギター弾きの深刻な悲恋か何か演じれば巧技忽ち一世を風靡して時代の寵児となるのだけれども、それが分りすぎるから同僚の嫉みに妨げられて実現できないのだという。ギターをきかせるから遊びにこいとしつこくいうので二人そろって行ってみたが、話の外の素人芸で、当人だけが聴きほれて勝手なところで引っぱったり延ばしたりふるわせたり、センスが全然ないばかりか、悪趣味のオマケがあるだけだった。

三木は私を口説いたが拒絶したので、登美子さんを口説いてこれも拒絶された。私は黙っていたので、登美子さんは自分だけだと思って自慢顔に打開けたが、私は三木の薄ッペラなのが阿呆らしくなっていた折だから、その後は交際はやめてしまった。まもなくゴルフの出来ないような時世になって、やがて女学校を卒業したが、登美子さんは拒絶しながら、しかし内々得意になってその後も交際をつづけていた。