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あおおにのふんどしをあらうおんな

青鬼の褌を洗う女

坂口 安吾

「愛と美」朝日新聞社、1947(昭和22)年10月5日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,368 字 · 79 页

青空文庫

私の浮気もいわば私の衣裳のよろこびと同じ性質のもので、だから私が浮気について心を悩ますのは帽子や衣裳や靴と違って先方に意志や執念があることであり、浮気自体にうしろめたさを覚えたことはなかったが、私はこの浜で、大学生やヨタモノみたいな人や闇屋渡世の紳士やその他お茶によばれたり散歩やダンスに誘われたが、私はいつも首を横にふってことわった。そのとき私はそんなことをしては久須美に悪いと考えた。そして浮気をしないのが、久須美に対する感謝の一つの表現だと考えた。その考えはなんとなく世帯じみたようでイヤであった。私は母に義理人情をいわれるたびに不快と反抗を感じ、母の無智を憎んだけれども、私もおのずから世帯じみて自然のうちに義理人情の人形みたいに動くようになっているのが不快であり、私はまた、母の姿を見出して時々苦しかった。

私はしかし浮気は退屈千万なものだということを知っていた。しかし、退屈というものが、相当に魅力あるものであり、人生はたかがそれぐらいのものだとも思っていた。私は久須美が痩せているくせに肩幅がひろくそこの骨がひどくガッシリしており肋骨が一つ一つハッキリ段々になっている、腰の骨がとびだし、お尻の肉が握り拳ぐらいに小さく、膝の骨だけとびだして股の肉がそがれたように細くすぼまり脛には全くふくらみというものが失わ