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しずおかじしんひがいけんがくき
静岡地震被害見学記
寺田 寅彦
「婦人の友」1935(昭和10年)9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,949 字 · 10 页
三島から青年団員が大勢乗込んだ。ショベルや鍬を提げた人も交じっている。静岡の復旧工事の応援に出かけるらしい。三等が満員になったので団員の一部は二等客車へどやどや雪崩れ込んだ。この直接行動のおかげで非常時気分がはじめて少しばかり感ぜられた。こうした場合の群集心理の色々の相が観察されて面白かった。例えば大勢の中にきっと一人くらいは「豪傑」がいて、わざと傍若無人に振舞って仲間や傍観者を笑わせたりはらはらさせるものである。
富士駅附近へ来ると極めて稀に棟瓦の一、二枚くらいこぼれ落ちているのが見えた。興津まで来ても大体その程度らしい。なんだかひどく欺されているような気がした。
清水で下車して研究所の仲間と一緒になり、新聞で真先に紹介された岸壁破壊の跡を見に行った。途中ところどころ家の柱のゆがんだのや壁の落ちたのが眼についた。木造二階家の玄関だけを石造にしたようなのが、木造部は平気であるのに、それにただそっともたせかけて建てた石造の部分が滅茶滅茶に毀れ落ちていた。これははじめからちょっとした地震で、必ず毀れ落ちるように出来ているのである。
岸壁が海の方へせり出して、その内側が陥没したので、そこに建て連ねた大倉庫の片側の柱が脚元を払われて傾いてしまっている。