轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
すまでらふきん
須磨寺附近
山本 周五郎
「文藝春秋」1926(大正15)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,396 字 · 21 页
しかし清三はすぐ康子の前に膝をおとした。康子の手が清三の髪毛の中に差しこまれた。二人の嵐のような呼吸が静寂な八畳の部屋に荒々しく続いていた。
「あたし来月の船で亜米利加へ行きます」
「――――」
「五日ほど前に電報がまた来てね! 船まで定まってしまったんです」
康子の言葉は遠くから来るようだった。
「階下へ」
清三は辛うじてそう呟いた。
「あなたもいらっしゃい」
清三はわずかに首を振った。
「清水さん」
康子の熱い呼吸が清三の頬に近づいた。
「我慢なさい」
そう云って康子は静かに階下へ去った。
清三は冷たい畳の上に仰臥した、眼が暗い中でちかちかした、我慢なさい我慢なさいという言葉が何度も舌の先で翻った。
明る朝起きて見ると雨だった、康子はもうとうに神戸へでかけていた。
「顔色が悪いぞ、熱でもあるんじゃないか」
青木は背広に着換えているところだった。
「少し頭が痛い」
「何だか嫂が、今日は君が休むそうだから留守を君に頼んでくれと云っておいたぜ」
「そうか」清三はちょっと微笑して見せた、心の中では康子の人の意表に出る態度がはっきり分かった。
「あの人、亜米利加へ行くんだそうじゃないか」