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あたまとあし
頭と足
平林 初之輔
「探偵趣味」1926(大正15)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,733 字 · 4 页
彼は靴のひもを結びなおし、腰のバンドをしらべ、帽子を眉深にかぶり直し、万が一にも手ぬかりのないように、いざといったらすぐに駈けだすことのできるように用意していた。三四分もたつと里村が船室にもいたたまらぬと見えて、矢張り浮かぬ顔付をしてデッキへ上って来た。競争が切迫するにつれて二人は緊張しきってもう一言もものを言わなかった。
二
船はいよいよ波止場へついた。人夫が船を岩壁へひきよせる間も、デッキから波止場へ厚い板でブリッジがかけられる間も二人は、気が気でなかった。
やがて船客は降船しはじめた。田中は第一に船を降りて、韋駄天のように駈け出した。里村はそれにつづいた。
田中が郵便局へ息を切らしてついた時には生憎く、町の労働者風の男が、電報取扱口へ、十枚ばかりの頼信紙を出しているところであった。その男は、何か不幸な事件でもあったと見えて、あとからあとからと頼信紙へ同文の電文をつけている様子だった。
田中は、まだかまだかと督促してもどかしがった。
「親戚に急な不幸がありましてな」件の労働者は気の毒そうに田中にわびた。
里村がそこへ息せききってかけつけた。