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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

04 鎌いたち

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,783 字 · 22 页

青空文庫

庄兵衛の娘の花世。四十になってからのひとりっ子なので、まるで眼のなかへでも入れたいような可愛がりよう、普断ならば、寄って来られただけで、もう他愛なくなってしまうほどなのに、今日はどういう風の吹きまわしか、花世がそばにいるのさえ気づかぬ様子である。

庭には季節の花がある。

こうして矢たてや懐紙をひきつけているところは、下手な俳諧でもひねっているように見えるが、どうして、そんな細かい味をもったおやじではない。このごろ、江戸の市中を騒がしているかまいたちの事件を苦吟中なのである。

この月のはじめから、江戸の市中に不思議な事件が起きる。どうにもとらえどころのない事件で、それだけに江戸の人士を竦みあがらせている。

一日ずつあいだをおいて、続けざまに五人まで、の深く咽喉を斬られて街上に倒れていた。

最初の犠牲者は本所猿江の金持の隠居で、新湊稲荷のまえに俯ぶせに倒れていた。門跡様からの帰りであった。二十両余りの金を懐中にしていたが、それもそのまま残っていた。ほかにもなにひとつ失くなったものはない。

それから、一日おいて次の夜、佐竹の家臣で、相当腕のたつ武士が、これもやはり、同じように咽喉を斬られ、越前堀の『船松』