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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

09 丹頂の鶴

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,040 字 · 26 页

青空文庫

将軍は寄垣口の床几にかかり、左右に従行一同がいならぶ。

青垣口の、白木の台の上には『瑞陽』の死骸が横たえられ、それを左右から取りつめるようにしてふたりの吟味役、藤波と顎十郎が床几にかける。吟味聞役の遠江守は南面、審判役の阿部伊勢守は北面してひかえる。

籤先番は藤波友衛となり、一礼して台にすすみ、打ちかえし打ちかえし、羽交の裏表、口内、爪先にいたるまでとくと検め、しずかに引きさがってくる。つづいて顎十郎の番。藤波の緊張した物ごしにひきかえ、こちらは相も変らずのんびりとしたようす。まるで石ころでもころがすように無造作にとっくり返し、ひっくり返し、気がなさそうに眺めていたが、なんだつまらぬといった顔で、のそのそと床几へもどってくる。

遠江守は、膝に白扇をついて、

「お鶴あらためがおわりましたらば、ただちに吟味にかかる。心得はすでに老中より申し聞かされたはず。相対異論あらば討論さしつかえない。籤先番により、まず藤波友衛、吟味次第を申して見よ。……さらば相たずねる。丹頂のお鶴、これなる『瑞陽』は自然に死したるものか、あるいは、人手にかかりたるものか。そちの推察はなんとじゃ」