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かお

顔

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,099 字 · 23 页

青空文庫

フランツは嬉しそうににこにこした。

「ほう! 両刃だね」

ルイザは、卓子の彼方側から、熱心に父子を見守った。ハンスが妙に口を利き難そうにし、何か心に考えを持っていることが彼女によく分った。フランツがすっかり満足し、刃をすかしたり、彫りの模様を検べたりする様子を見ていたハンスは、更に細長い棒のように巻いたものをとり出した。

「これもまあ記念の積りだ。――机の傍の壁にかけられる大きさだと思うが。開けて見ないか」

フランツは、ナイフを置いて、結びめを解いた。そしてくるくると少し内側を拡げると、彼は感歎の声をあげた。

「ほほう! これ! まるでいいや」

フランツは、手一杯に拡げたものをルイザの方に向けた。一目見て彼女は息が窒(つま)りそうになった。それは聖画、しかも先刻会堂で、彼女が、その中の基督がフランツか、フランツがその救主かと震えながら見た少年イエスが博士達と問答をしている画であった。

ハンスは、ルイザの愕きをわざと見ないふりで、フランツに何気なく云った。

「腕一杯だな――脇棚に下げて見よう」

彼はフランツを助けて、二つの壺を重しに使い、棚からその聖画を下げた。