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かお

顔

宮本 百合子

「中央公論」1924(大正13)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,099 字 · 23 页

青空文庫

フランツは、何故か、自分は悪戯(いたずら)やその他同じ年頃の少年のする馬鹿なことは、決してしないものと傍からちゃんと定められているような窮屈さを感じた。

たまに何かやると、人々は真面目に、大人に対してのように言葉寡(すくな)く愕きを示した。そして彼から、弁解や活溌な口応えや、止められたことをまたする冒険の面白さを殺(そ)いでしまった。

彼は、何とも知れず厳かな雰囲気が、到るところ自分の行く先について廻るのを知った。彼の少年らしく野放しな陽気さをのぞむ心持、腕白小僧のように遠慮なく大人とふざけ廻って見たい気持は、皆、そういう彼の力ではどうしようもない何物かで阻まれてしまうのであった。

これ等の、内へ内へと、自分の憧れや、楽しさを追い込まれる寥(さび)しさが、全く、不思議な自分の顔立ちの故だとはっきり解ったのは彼が十五の時であった。

その年の秋、例年通り、村長の持ち山で、胡桃(くるみ)もぎの年中行事があった。

フランツもその年から村の若者の仲間入りが出来る筈であった。彼は、白絹の晴着の襯衣(シャツ)をつけ、父親の他処行を直した天鵞絨(ビロード)の半洋袴(ズボン)をはいて、隣りのエルンストと出かけた。