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かぜにのってくるコロポックル
風に乗って来るコロポックル
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,458 字 · 39 页
豊が来るまで。
どうぞ、豊に手渡ししてしまうまで!
宝物を奪われないため、人に詐されないため、執念深いコロポックルに負けたくなかった。
どうぞ、ほんとにどうぞあの豊坊の帰って来る日まで!
ただ、それだけである。ただそれだけのために、イレンカトムは泣くようにして、山本さんにコロポックルを追払うに好い方法を教えて下さいと願って行ったのである。
山本さんも困った。どうしたら好いか分らない。まして彼に好意を持っている自分が、唯一の頼りある者として願われて見ると、なおさら困る。それだからといって、勿論、放って置くには忍びない。山本さんも考えずにはいられなかった。
イレンカトムは、まるで幾代か伝わって来た伝説の断面のような男であるのは山本さんも知っている。難かしい理窟で、自分の頭を支配する種類の人間ではない。いろいろな人にも聞き、考えもして、とうとう山本さんは、或る坊主が実験して成功したという一つの方法を思い出した。
そこで、イレンカトムを呼ぶと、山本さんは厳格な態度で、一包みの豆を彼の前に置いた。そして、次のようなことを話した。
「この紙包みの中には、豆が入っている。