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ふろくようのはなし
風呂供養の話
田中 貢太郎
在线阅读田中 貢太郎《風呂供養の話(ふろくようのはなし)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,200 字 · 5 页
中国山脈といっても、播磨と但馬の国境になった谷あいの地に、世間から忘れられたような僅か十数戸の部落があったが、生業は云うまでもなく炭焼と猟師であった。
それは明治十五六年比の秋のことであった。ある日、一人の旅僧が飄然とやって来て、勘右衛門という部落でも一番奥にある猟師の家の門口に立って、一夜の宿を乞うた。
その日、亭主の勘右衛門は留守であったが、女房と娘が出て見ると、二十六七の如何にも温厚そうな眉目清秀の青年僧で、べつに怪しいところもないので、むさくるしい処でもお厭いなくばと云って泊めた。
やがて、帰宅した亭主も旅僧を疑わず、其の夜は、旅僧から旅の話を聞いて珍らしがった。そして、翌日になったところで、生憎とどしゃぶりの雨になって、それがその翌日も続いたので、旅僧はしかたなく逗留することになったが、娘の千代は、日一日と旅僧になじんで往った。また一方、旅僧の方でも、千代の美しい姿にひきつけられているようであった。
千代はまだ十六の少女であったが、その美貌と気だてのよさに、近在の青年たちの注視の的となっていた。
そのうちに旅僧は、べつに先を急ぐ旅でもないから、どこか山の中に良い場所があるなら、庵を結んで、心静に修行したいといい出した。