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ふうりゅう
風流
「新潮 第四八巻第十三号」1951(昭和26)年12月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,419 字 · 19 页
新品を自分で発明するなど思いもよらぬ。己れの空しいところに文化はあるまい。穴の入口の朝顔を鉢植えにして、新しい主人から与えられた鉄骨ビルの窓辺へ移すだけのことだ。そして、また再び、鉄骨ビルからホラ穴へ戻ることも容易であるし、風流は上下どこに行っても大差なく間に合うものである。どこにでも間に合うし間に合せうることも風流の本義であるから、仏教の空観などにワタリをつけて複雑難解な心境や奥儀をでッちあげる素地だけはタップリあるのだ。
思えば私も半生の二分の一はそのような風流の迷路を辿ってきた。そこを辿ると深遠な何かがあると子供心に思ったからだ。日本に生れて育った私が、日本人として例外である筈はない。むしろある時期には余人以上に日本的な風流少年、風流青年であったかも知れぬ。
いかなる場合に処しても間に合わせうる心境はまさしく安心立命の基でもあろう。これぐらい容易で、簡便で、平穏な生き方はなかろう。常に己れを空しゅうして主人に服し、強制に服するぐらい生き易いことはなかろうさ。泣く子と地頭には勝てないと思いきわめ、三匹の猿になる修練に何十年心をうちこむ修養を要したにしても、まさしくその一生は一酔一夢というような楽チンきわまるものである。