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ふうりゅう

風流

坂口 安吾

「新潮 第四八巻第十三号」1951(昭和26)年12月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,419 字 · 19 页

青空文庫

より深い心境がなければならぬ。その心境をこしらえたり叫んだりするのが主要なことで、朝顔の花を楽しみ、蓮の花のひらく音を楽しむという直接なものは従である。心境をもてあそぶことが本義で、自分の感官が正直に面白がったり楽しんだり美しいと思ったりする直接の生活は、原始的なもの、風流以前のもの、通俗なものとして捨てなければならないことを自ら規定しているのである。

要するに、自分のジカの生活というものがないのである。どうしても主人持ちでなければならないのである。風流の地盤は、強制に服する万全の用意、待望だ。己れを空しゅうするところに始まり、また、そこに終る。

だから、風流はいかなる強制にも応じうる。右と云えば右。左と云えば左。もしもヒットラーが攻めこんでくれば忽ちハイルヒットラーになりきり、レーニンが侵攻すれば忽ちレーニンの筋金入りとなりきるように、日本の風流は鉄骨鉄筋の大ホテルに住むことも、穴の中に住むこともできる。強制次第でどこにでも安住できるし、その風流をたのしむ心境にも変りがない。

つまり、穴の入口の朝顔を鉢植えにして鉄骨鉄筋大ホテルの窓辺へ移すだけのことだ。