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ふうちそう

風知草

宮本 百合子

「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页

青空文庫

日曜大祭日は、その労役が免除された。そういう日に、重吉たちは、限られた本をよむことが出来た。そのかわりに、その日は食事の量が減らされた。本のよめる日は必ず空腹でなければならなかった。労役免除の日は食餌を減らして、囚人たちが休日をたのしみすぎないようにする。それが、監獄法による善導の方法と考えられているのである。

焼けたいもをとって、ひろ子もたべた。

「あら、本当に、このおいもは、特別おいしいわ」

「そうだろう?」

おそい朝飯をすましてすぐ家を出かけ、この研究所に勤めている友達に、重吉の健康診断をしてもらいに来た。重吉とひろ子は、鮭のカンヅメとパンとをもって来た。友人の吉岡がおいもをあてがっておいて、室を出て行った。妻子を疎開させたから、研究所に寝泊りして自炊している吉岡は、自分が実験用の生きものにでもなっているように、隣室のベッドの下に泥だらけのものだの大根だのを押しこんで暮しているのであった。

「吉岡君、なかなかおそいね」

「送別会なんでしょう?――三十分や一時間かかるわ」

白い上っぱりをはおった助手がドアをノックして入って来た。片隅で煮えている液体の状態を調べてから出て行った。