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ふうちそう
風知草
宮本 百合子
「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页
しばらく黙っていて、重吉は、
「だが、いまの、一番ふさわしい仕事をしていい、ということは、作家なら作家としての日常に、歴史的な責任を求めないということじゃあないんだよ」
ひろ子の理解を補おうとするようにつけ加えた。
「それは、わかるわ。求められるというわけのことじゃないんですもの、土台――自分が求めて、その門に到った、ということなんだもの……」
「文化関係の人は概してこだわるね」
ひろ子の場合をこめて、更にひろ子の知らない、いくつかの例を、心のうちで調べるように重吉が云った。
「――やっぱり生活や仕事のやりかたが個人的なせいかしれないね。……夫婦なんかの場合、ギャップはうめられなくなるからね」
最後のひとことを、ひろ子は瞳を大きくしてきいた。重吉がそれを云ったということではなく、一番しまいに、ひろ子が自分で自分のこころもちをきめたのち、はじめて重吉はそれを云った。そのことが、ひろ子のきもに銘じたのであった。
十二月はじめに、はじめての大会がもたれることになった。赤旗編輯局という表札と同様に衆目の前でもたれる大会として、それは最初のことであったが、歴史の中では第四回目に当った。