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ひだのかお
飛騨の顔
「別冊文藝春秋 第二三号」1951(昭和26)年9月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,316 字 · 31 页
で胸を射ぬかれて死んでしまう。その方などにも当っております。天智以前の天皇記と神話は嫡流をヒダへ追って亡して大和中原を定めた庶流が、その事実を隠したり正当化するために、神話から三十代ぐらいまでの長い天皇物語をつくって、同一人物や事件に色々と分身をつくって各時代に分散させて、これを国史と定めた。だから古代史を解くのは探偵作業に当ります。殺人犯がいろいろ偽装すると同じような偽装事業として成ったものが最古の国史であるから、その偽装やアリバイを史書から見破るのが古代史を解く作業で、それはタンテイという仕事の原則と同じくよい加減な状況証拠でなくてハッキリと物的証拠をだしてやってゆかねばならぬ。過去の史家はこの分りきった偽装の方をうのみにして、これを真実の物としていました。そして、それに反する史料が現れると理窟ぬきでそれは国史に反するもの、マチガイを書いた偽書偽作ときめつけていたものです。
たとえば万葉の歌に、ミヤコから美濃と尾張の境にちかいククリの宮の恋人のところへ通うのに木曾の山を越え美濃の山を越えて、とよまれています。そんなバカな道順があるものか。大和飛鳥の都からククリの宮へ行くには奈良や京都や伊賀や近江を越えるかも知れんが、美濃の山や木曾の山はその向う側じゃないか。