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うえたるひゃくしょうたち

飢えたる百姓達

今野 大力

「文芸戦線」1930(昭和5)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,590 字 · 4 页

青空文庫

稲の穂先へ米が幾粒実ったとても

それが生活への打撃の少ないものはいい

一粒の種から一粒の穂先が首を天上へ――

野は早くも荒涼

寒冷に夜はあける

稲ハセは痩せて鳥の飢えたる鳴き声に

不吉な暗示を、

百姓達は

ああ どうしようもない 組合もない

いや増しに来る寒さは吹雪となって腿引の破れへ首を釣り

穀物の尠い土地に雑草の種は蒔かれる。

冬空、雪雲が彼方から村を襲う

ああ 饑餓と窮乏の争には

木の葉となって泥沼の中に漂う飢えたる貧しき百姓達。

雪が降って気も心も親も子も家も畑も立枯も草立も

みんな一切は埋れてしまう。

「来春の種籾をどうすべかや」

「役場さ行って借りて来べかし」

「地主様さ行って願って見べかし」

「いやいや出稼ぎに行くべぞ」

村には働く男衆が失われる。

村には今年正月がない 山の神もない

村では物憶えの悪い百姓達があちこちへ寄り合い

羽蚤に痩せ衰えた※(「奚+隹」、第3水準1-93-66)が卵も生まずに馘られる

酒は悪酔の地酒 密造酒、

肴はしなっこい鼠の肉

お銚子料理番は 栄養不良の嬶あ達

松内の祝いは共同で催される

共同は経済だ!

息子は市街へ小僧に送られ

娘は女中や女郎へ追いやられ

「儲けろ 沢山とな 立派人になって呉れ」