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きがのなかから
飢餓の中から
中野 鈴子
「プロレタリア文学 第一巻第五号」日本プロレタリア作家同盟出版部、1932(昭和7)年4月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 647 字 · 2 页
腹は凹んで皮ばかりのようだ
口はほせからツバも出ない
目はかすんでものが見えぬ
三分作なのに地主はおしかけて来た
来年の年貢をよこせと
そして 手をあわせて拝むわたしらを尻目にかけ
一粒のこらず かっさらって行った
毎日毎晩
わたしらは夢中で外へ這い出た
キョロキョロになって吹雪の中をかけまわった
木の根をむしった
草の芽をかんだ
見つけ次第
犬猫を殺し奪い合って食った
腹がキリキリした
ゲイゲイ吐いた
いまは 一匹の犬猫も見えぬ
一つの木ノ芽もない
娘らは小娘のからだで女郎に売られて行った
その金は借金取がおさえた
息子らは満州へ×いやられた
たくさんの息子らと一しょに箱づめにされ
そして停車場へかけつけたわたしらを
ホームへも入れなかった
さし出す息子らのかおを押しこめ
汽車の窓を閉じた
わたしらは地面に頭をおしつけて泣きくずれた
じたばた踏んだ
おお もはや
村中には
息子も娘も犬猫も木ノ芽もない
そして
腹がひっついてしまい目が見えぬ
だが
このままでいると思うか
なるほどヒョウも降った
雨も降り過ぎた
けれども自作農は七分作だぞ
わたしは肥料が買えなかったのだ
去年もおととしも
このままでは
来年もさらいねんもズッとキキンだぞ