轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こうでん

香奠

豊島 与志雄

「時流」1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,989 字 · 46 页

青空文庫

妻と女中とは子供達を連れて動物園へ行って、私一人で留守をしていました。その午後三時頃、平田伍三郎は大変な元気ではいって来ました。けれど何だか顔色が悪く、肩ではあはあ息をしていました。

「どうしたんだい、加減でも悪いのか。」と私は尋ねました。

「いえ何でもありません。急いでやって来たものですから……。」

そして彼は額の汗を拭きながら、ふいにくすりと笑いました。

「何か面白いことでもありそうだね。」

「ええ、そりゃあ滑稽なんです。先生を呼びに来ようかと思ったんですが、とても来ては下さるまいと思い返して、私一人で見ていました。さっき済んだばかりです。」

「どうしたというんだい。」

「実は私が一寸へまをやっちゃったんです。」と話し出しながら彼は善良そうな眼をくるくるさせました。「この前お話しましたあの……私の室の窓から見下せる隣りの家ですね、あすこの娘に、私が横着をきめこんで、急に用事が出来た時には紙片に書きつけて投げこんでいたのです。それを親父に見つかりましてね、ひどく怒ったそうです。逓信省に勤めてる下っぱの腰弁で、まるで頑固一点張りの男なんです。私が窓から紙片を投ったのを見付けて、娘の方はそっちのけにして、私に対して向っ腹を立てたらしいんです。