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うま
馬
佐左木 俊郎
「新潮」1932(昭和7)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,299 字 · 15 页
そして伝平は、雀が餌を運ぶようにして、三十銭五十銭と持って帰るのであったが、その端金はまるで焼け石へじゅうじゅうと水を滴らすようなものであった。
「お母あ! 俺が日傭で取って来た銭だけは蓄めでてけれ。馬を買うのだから。」
伝平はそんな風に言うのだった。
「蓄めで置きてえのは山々だどもよ。ふんだが、馬を買うのにあ、三月も四月も、飲まず食わずに稼がなくちゃなんめえぞ。馬も欲しいが、生命も欲しいから、なんとも仕方ねえよ。」
母親は哀れっぽく言うのであった。伝平は仕方なく、そのまま日傭などを続けていたが、十八の歳の早春の、農閑期の間に、彼は突然いなくなってしまった。そしてそのまま半年ばかりは、どこへ行っているのか全然わからなかったが、秋になってから、初めて、硫黄山に働いていたことがわかった。併し、伝平は、それから間もなく、栗毛の馬を一匹曳いて自分の家に帰って来た。酷く痩せていて、尻がべっこりと凹んでいるよぼよぼの、廃馬も同様の老耄馬であった。それでもしかし、父親や母親を驚かすのには、それで十分だった。
「伝平! 汝あ、馬、買って来たのか?」
父親は赤爛れの眼を無理矢理に大きく押し開けながら言った。