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がいこつのくろんぼ

骸骨の黒穂

夢野 久作

「オール読物」1934(昭和9)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,160 字 · 28 页

青空文庫

あとをピッタリと閉めて、掛金をガッチリと掛けた銀次は、そのまま町の方へ去る小女の足音が聞こえなくなるまで聞き送っていた。ニンガリと笑い笑いつぶやいた。

「……ヘヘ……とうとう来やがった。可愛相だが悪魔様の犠牲だ。ヘヘ。待っていたぞ畜生……うまく行けあ俺の信心は満点だ。大阪の金持以上の根性になれる。ヘヘ……義理も人情も、神も仏も踏殺して行けるんだ。怖いものなしになれるんだ。ヘヘ。立身出世自由自在だ。ヘヘ。待っていたぞ畜生……」

そんな独言を云っているうちにタッタ一人で真青に昂奮したらしい銀次は、緊張した態度でセカセカと身支度を初めた。

最初に此家へ来た時の通りの手甲脚絆に身を固めて、角帯をキリリと締め直すと、押入の前にキチンと坐った。藤六が居た時のままになっている粗末な仏壇の前に坐って、赤い金襴の帷帳の中から覗いている茶褐色の頭蓋骨を仰ぎながら、何かしら訳のわからぬ事をブツブツと唱え初めた。それから自分の頭の毛を両手でゴシゴシと掻きまわして礼拝し、礼拝しては掻きまわして四度ばかり繰り返すうちに、やがて猿のような卑しい冷笑を、顔一面に浮べながらスックリと立上ると、押入の反対側の隅の小箪笥から、もう一度、黄木綿の袋を引出して、かなりの額の円札や銀銅貨を叮嚀に数えて胴巻に入れた。