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がいこつのくろんぼ
骸骨の黒穂
夢野 久作
「オール読物」1934(昭和9)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,160 字 · 28 页
巡査達の顔を素早くツラリと見渡したまま固くなっていたが、やがて覚悟をきめたらしく、軽いため息を一つ鼻から洩らすと、縄を解く邪魔にならないように、すこし横に立退いた。入口に立っている巡査の背後をスリ抜けて一気に表へ飛出せる位置に立った。古ぼけた博多の角帯の下に、右手の拇指を突込んで直ぐに結び目を前へ廻わせる準備をしていたのを誰も気付かなかった。
キチンと座り直した小娘はそうした銀次の態度をジロジロと横目で見ているようであった。巡査に取捲かれたまま縄を解かれると、すぐに襷を外して、肩のあたりをシキリに揉んでいた。それから裾をつくろいながら中腰に立上って、膝を揉んだり押えたりした。そうして又もペッタリと座り込むと鬢のホツレを指先で掻上げながら咳払いを一つ二つした。
「……すみません。お湯一パイくんさい。咽喉がかわいて叶わぬけに……」
と頭を下げて、カンカン起った火鉢の上の大薬鑵に手をかけると、思い切って立上りさま天井を眼がけて投上げた。灰神楽がドッと渦巻き起って部屋中が真白になった。思わず飛退いた巡査たちが、気が付いた次の瞬間にはモウ銀次と小女の姿が部長室から消え失せていた。