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こうだいじ
高台寺
宮本 百合子
「新潮」1927(昭和2)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,503 字 · 14 页
葭簀を洩れた日光が余り深くない水にさす。異様に白く、或は金焔色に鱗片が燦めき、厚手に装飾的な感じがひろ子に支那の瑪瑙や玉の造花を連想させた。
「なあ、ヘェ、あてらうちにこんなん五匹いるわ」
それは普通の出目金で、真黒なのが、自分の黒さに間誤付いたように間を元気に動き廻っている。揺れる水面にさす青葉のかげ、桃龍の袂の色が、早い夏のようだ。
彼等は円山の奥まで歩き、亭に休んだ。亭のある高みの下を智恩院へゆく道が続いていた。その道を越して、もっと広い眺めが展けている。下の道を時々人が通り、亭の附近は静かであった。花の咲かない躑躅の植込みの前にベンチがあり、彼等が行ったとき、そう若くない夫婦がかけていい心地そうに目前の眺望に向っていた。桃龍は、着物の裾を両方の脚に巻きつけるような工合にして暫く亭にかけていたが、やがて、
「えろ仲よそうにしてはる、ちょっとなぶって来てやろ」
つかつかその人達の方へ行った。火を貰って此方向きにかえって来ながら彼女は嬉しそうに笑って舌を出した。彼等もつり込まれて思わず笑い、莨の火をかりた人の方を見ると、その人々も笑っている。日曜日らしい寛ろいだ情景でひろ子は愉快を感じた。