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かみ
髪
織田 作之助
「オール読物 十一月号」1945(昭和20)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,381 字 · 17 页
私の髪も長かったが、高等学校生活も長かったわけである。私は後者の長さに飽き果てて、遂に学校に見切りをつけてしまった。事変がはじまる半年前のことであった。
三
学校をやめたので、私は間もなく徴兵検査を受けねばならなかった。
私は洋服を持たなかったので、和服のまま検査場へ行った。髪の毛は依然として長く垂れたままであったことは勿論である。丸刈りにしていった方がよかろうと忠告してくれる人もあったが、私は少々叱られても丸刈りにはなりたくなかったのである。ところが検査場では誰も私の頭髪を咎める者はなかった。ただ身長を計る時、髪の毛が邪魔になるので検査官が顔をしかめただけであった。
身体検査が済んで最後に徴兵官の前へ行くと、徴兵官は私が学校をやめた理由をきいた。病気したからだと私は答えたが、満更嘘を言ったわけではない。私は学校にいた時呼吸器を悪くして三月許り休学していたことがある。徴兵官は私の返答をきくとそりゃ惜しいことをしたなと言い、そしてジロリと私の頭髪を見て、この頃そういう髪の型が流行しているらしいが、流行を追うのは知識人らしくないと言った。私はいやこんな頭など少しも流行していませんよ、むしろ流行おくれだと思いますと答えた。