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おにたいじ

鬼退治

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1925(大正14)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,214 字 · 11 页

青空文庫

三

しかしぐっと胆力をすえて、本堂の中へ入ってみた。そして中の様子を隈なく調べた。それから廊下つづきの庫裡の方へ入って行った。そこも雨は漏り、畳は腐り、天井には穴があき、そこら中がかびくさかった。勘太郎は土間の上がり框のところにある囲炉裏の所へ行ってみた。と、自在鉤の掛かっている下には、つい昨夜焚火をしたばかりのように新しい灰が積もり、木の枝の燃えさしが散らばっていた。さらによく見るとその炉端には、鳥の羽根や、獣の毛や、人間の骨らしいものが散らばっていた。

「なるほど、鬼どもは生け捕って来たえものをこの囲炉裏で焼いて食うのだな。それじゃ一つ、この炉の上の天井に隠れて今夜の様子を見てやろう。」

勘太郎はそうひとりごとを言って、それから土間の柱をよじ上って、ちょうど炉端がぐあいよく見える穴のあいている天井の上に隠れた。

三

やがて日は暮れた。日が暮れると短い夏の夜はすぐ更けていった。一寸先も見えない真っ暗な寺の中はガランとして物音一つしない。勘太郎は息を殺し、今か今かと鬼どもの来るのを待っていた。

すると夜中の一時頃であろうか。本堂の方の廊下を歩く大きな足音がきこえて来た。