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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

こんなように、好んで江戸がった崩れた言葉を使うのが、大迫玄蕃なのだ。さくいお殿様てエところを狙ってるわけで。

ところが、用人源伍兵衛の語調たるや、はなはだ尋常でない。

「豆腐屋どころの騒ぎではござりませぬぞ」と、障子を引きあけて、それこそ豆腐のように白くなった顔を覗かせ、「あァ、殿様……まだ生きていてよかった。祝着至極に存――」

「黙れッ! ただいま玄関においても、余の生命を質ぬる声が致したようだが、今また、そのほうまで、まだ生きておってよかったと申す。まだまだ三十年や四十年は生きる心算でおる拙者、さような言を聞くとは実もって心外であるぞ。第一、この通りピンピンしておる者が、そうコロコロ死んでたまるかッ」

「御意にございます。なれど、そういう張紙でございましたから――」

「張紙? 張紙とは、何の張紙か」

「はい。その、おいのち頂戴、只今参上と申す――」

「ナニ? 其方の申すことはサッパリ判らん」

「でございますから、一寸お玄関先までお越しを願います。一寸、殿様、ちょっと、まア、お腰をお上げ下すって――」

「それは、次第に依っては、出て見んこともないが、一体いま玄関で我鳴り立ておったのは、どこの何やつじゃ?」