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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
座蒲団が辷って、箱を倒した。ゴロゴロと転がり出たのは、かッと眼を見ひらいて散髪をくわえた人間の首だ。
またもや御書院番士の一人、猪股小膳である。三番首だ。
「ウウウム……」
片手をかざした山城守は、どどどッと部屋隅へよろめき後退った。ドウン! 襖にぶつかって、襖が倒れた。一弥は、鞠のように円くなって、小刻みの足を廊下に飛ばせて御用部屋へ走っていた。
八
江戸の辻々に、瓦版の読売りが飛んだ。
一番首、二番首、三番首……お書役の首が、片ッ端から落ちて行く。
役人、会社員などのサラリーマンが首になるという、その首なる用語の起源は、遠くこの時に発しているのだ――と、江都耳寄草なる写本にある。これはナンセンス。
だが、首は困る。
首になりたくないのは、今も昔も同じことで、これは断然ナンセンスではない。真剣だ。自衛だ。命懸けだ。
共同戦線を張る。
荒木陽一郎、横地半九郎、松原源兵衛の三番士、日中は大したことはあるまいが、夜ひとりでいるのは剣呑だというので、一晩ずつ三人の家を順に提供し合って、三人寄れば文殊の智力、鼎坐して夜を徹することにした。
しかし、剛剣の名あった大迫玄蕃、浅香慶之助、猪股小膳の諸士を、ああも鮮かに遣ッつけた神尾である。