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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
越前守は知っているから、温厚な顔に、こころもち緊張を見せて、じイッと相手の眼を見つめている。
「私も考えておったが、形勢もきまったようですぞ」平淡路が言うのである。「この際、山城の言い分の逆に出たほうがよいように思う」
「それは、言うまでもなく、山城殿は私情に動かされております。さもなくて、伊豆屋からお油御用を取り上げて筆屋幸兵衛へ用命しようなどと、さような小事にさほどまで執着さるるはずはないと、イヤ、これは、越州一個の考えでござるが――」
「私情? 私情は大出来! いつもながら大岡殿は皮肉でござるな。うっかり聞いておるとそれだけの言葉だが、さて、その言葉を砕いてみると――ハハハハハ、どうも油断がならぬ。脛に傷持つ身には煙たがられる訳です。私情はよかった。いかさま私情、私情、金がほしさに、まいないを受けて策動いたす。わが身第一の動機で、なるほどコリャ私情、まさにわたくしの情でござるテ」
「ウフフフ、さような意味で申したのでもござらぬが――」
「断乎として山城の案を一蹴し、従前どおり伊豆屋伍兵衛を引き立てて然るべく存ずるが、越前どの、御高意如何?」
「ここはどうあってもそうあるべきところ」