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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
五、六人の大官が、綺羅星を集めたように美々しい一団となって通りかかった。加納遠江守はすぐわかる。眼じりに有名な黒字がある。泣きほくろだと言うので泣き加納の名があるが、本人はこの綽名と正反対に始終にこにこしている。その泣き加納と何かささやきながら、よろけるようにして往くのが米倉丹後守である。足が悪いのである。すぐ後から安藤対馬守が、頭脳のなかで謡曲でも復習えているように、黙々と、しかし朗かな顔付きでやって来る。太田若狭守が大きく手を振って、足早に追いついた。そして低声で何か言うと、対馬守がほほえんでしきりに合点合点をしている。ひとり遅れて、平淡路守が超然と歩いて来る。山野に遊んで四方の景色を賞美していると言ったような、妙に俗塵離れのした恰好だ。背がすらりと高いので、年賀の礼装がこの人には一層よく似合う。白い顔を真っ直ぐに立てて、一歩ごとに袂を叩くように、ぶらり、ぶらりとあるいてくる。誰かを待ち合わせているようにも見える。と、うしろの廊下の角から人影が現れた。下ぶくれの和やかな顔である。晴ればれと眼を笑わせている。頬をきざむ皺に、人間的な、或いは浮世的なと言いたい、人生経験といったようなものが、深く彫り込められて見えるのである。